品目紹介

加賀れんこん
本 誠一さん

『まず地力。何年かあとに
必ず結果が出てくるから。』

色白で粘りがあって、節が詰まって実が締まっている。
全国に数あるれんこん産地でも、加賀れんこんは一目置かれています。
その品質を保っているのは、土壌と生産者の手間と思い。
農の匠は、その先駆者として、毎年チャレンジを続けています。

見えない土の中の 様子を読み取る

れんこんの田んぼを訪ねたのは、7月。花が咲いているときでした。白い花のまわりには、鮮やかな緑色をした丸い葉が一面を覆うように広がり、その下にある水も土も、もちろん地中にあるれんこんの姿も見えません。でも、本さんは、葉と水の上に出ている茎を指さしながら言うのです。 「このれんこんは、こっちに延びていますよね。1日1mぐらい延びるから、隣まで入ってしまわないように早めに曲げてやらんといかん」と。 指さす先には、ゆらゆらと風に揺れる茎があるだけ。その下に張っている水も土も通り越して、本さんには、地中のれんこんが見えているようです。「れんこんは、収穫するまで目で見ることができないものやから。だけど、葉や茎の様子を見たら、その下に延びているれんこんの状態がわかるよ。れんこんの始まりができるのが、“花かつぎ”の下、そこから順番に節ができて成長するから、どっちに延びているかもわかる。脇につながることもあるけれど、真ん中のは4~5節。節から茎が出て葉がついているから、茎や葉はれんこんの大きさや状態のバロメーター。茎にあいている穴は空気穴で、その穴とれんこんの穴の数は同じ。葉がどれぐらい大きくなっているのか、節の間隔はどうか、元気かどうかがわかる。最後の節に“とめ葉”が出てきたら、収穫の目印やね」

粘りとおいしさの基本は土づくり

加賀れんこんの特徴でもある独特の粘りは、蓮蒸しやすり流しなど、金沢らしい料理を作るのに欠かせないもの。とはいえ、加賀れんこんは独自の品種ではありません。ほかの産地でも栽培している「支那白花種」というれんこんです。それが、加賀の地で育てられ、“加賀れんこんらしく”なりました。 現在、加賀れんこんが作られているのは、主に金沢市の北部の小坂地区と、河北潟干拓地。ここは粘土質泥地の土壌で、この土がもっちりした食感を育てると言われています。とくに小坂地区は砂3:粘土7の割合で、重く密着度の高い粘土質。金腐川横にある本さんの田んぼは、砂4:粘土6ぐらいなので、少しモコモコとした独特の食感になるそうです。土壌が実の質感を左右するのは間違いありません。 その土がよりおいしいれんこんを育てるように、何年もかかってよい種を残し、肥料の量やタイミングを変え、水を浄化し…、そんな試行錯誤を重ねてきました。 「れんこんは本来長くなろうとするもの。節が詰まった加賀れんこんをつくるのは、その性質との戦いや」と。茎が折れるとそこから水が入ってれんこんが茶色くなるリスクも高いし、鳥が芽を食べてしまうこともある。 見えない土の中に目を光らせながら、手間ひまをかけて育てるなかで、れんこん栽培で一番大事なことは?という問いに、本さんは即座に「まず、地力」と。「土の力をつけること。それが、何年かたって必ずれんこんに表れるから」。

くわ掘りの収穫は伝統芸の域

収穫の目安は、葉が茶色くなって茎が枯れてきたころ。茎を一気に刈り取ると、いよいよれんこんの収穫シーズン到来です。本さんは、水掘りとくわ掘りの2種類の田んぼで育てています。水掘りは、ひざの少し上まで水を張った田んぼで、ホースで水を出しながら地中のれんこんを掘り出します。収穫が始まるのは、8月半ば。れんこんは鮮度が命なので、この時期は、当日掘りの当日出荷をしています。夜中の12時ごろに田んぼに入り、月明かりの下で掘っては、水面に浮かべているソリのような船に乗せていきます。 くわ掘りは、別名泥掘りともいわれる昔ながらの収穫方法で、水を抜いた泥の田んぼに入り、くわで掘っていきます。刃物を入れるため、失敗すると大事なれんこんを傷つけてしまうし、水をたっぷりふくんだ重たい泥をかきわけるのは、体力も必要です。  「くわ掘りは、10年かかると言われていてね。経験がものをいう、まるで伝統芸の世界や」。 最近は、水掘りが大半になってきているのも事実ですが、それでも本さんがくわ掘りの田んぼを大事にしているのは、加賀れんこんの神髄を次の代に伝えていきたいという思いの表れでしょう。 くわ掘りをする本さんの田んぼでは、跡を継ぐ息子さんも収穫に励んでいました。

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