品目紹介

くわい
高田 一男さん

『掘ってみるまでわからんから
大きいのが出てくると楽しいね。』

芽が出ているおめでたさから、おせち料理に欠かせないくわい。
金沢では、江戸時代から作られ始めた伝統ある野菜です。
現在は、北部の御所・小坂地区で栽培され
金沢の年の瀬の風物詩として、出荷されています。

お殿様が広めた 歴史ある農産物

くわいが金沢で作られるようになったのは、江戸時代。農業の振興に力を入れていた加賀五代藩主の前田綱紀が、愛知から取り寄せたのが始まりといわれています。大正時代に盛んになり、現在の市内北部や津幡町の肥沃で粘土質な土地で栽培されるようになりました。 高田さんは、くわいを育てて50年。 「親の代から手伝っとる。定年までは会社員として勤めながらやっとった。なんでくわいか…親がやっとったからやろうね。平成14年に加賀野菜に認定されて、辞められんようになった」と笑います。 生産者は、平成の初めごろまで20人ぐらいたそうですが、現在は9人。くわい部会として出荷しているのは、高田さんを含めわずか3人です。 れんこんと同じように水を張った泥田で育つくわいは、栽培も収穫も泥の中。しかも収穫は冬。水面に氷が張っていれば、割って泥の中に入っていきます。 「手は冷たいし、泥は重たい。でも、掘っていると大きいのが出てきたりする。掘ってみるまでわからんから、それがなんとも楽しいね」。

土づくりに始まり 土の手入れに終わる

くわいの田んぼには、年中水が張っています。雪のシーズンが終わる3月にネットを張り、4月に耕起、5月に石灰窒素を散布したあと、代掻きをします。グラウンド整備に使うトンボを使って田んぼを平らにしておきます。 「土をちゃんと作っておけば、いいものが採れる。どんな肥料を使えばいいのか、いつやればいいのかは、今までの積み重ねでなんとなくわかっているから」。 高田さんの田んぼがある御所地区は、昔からくわいやれんこんが作られていました。肥沃な泥地は、くわいを育てるのに最適な土壌だそうです。 植え付けが始まるのは、6月。気温の目安は13度~15度ぐらい。持ち込んだ前田家に敬意を表してでしょうか、百万石まつりが前田利家公入城の日、6月14日だったころは、その日を目安にしていたそうです。 7月には追肥、8月には内側の葉を6~8枚残して下葉4枚をかきとる「葉かき」を2回、9月の下旬になると、水を張る高さを上げます。茎や葉が枯れてくる11月中旬になると、いよいよ収穫の始まりです。 胸まであるゴム長とゴム手袋姿で、泥の中に入ります。見当をつけて泥を手さぐりすると、手にくわいがチョンとあたるそうです。それをひとつずつ地下茎から切り取り、泥から揚げて収穫です。 「田んぼにくわいが残ってると、芽が出てしもうて次の年がたいへんなことになるんや。だから、収穫がだいたい終わった頃、最後にもう1回掘ってみんといかん」 次に向けて土をきれいにしておくのだそうです。

収穫したあとが 実は一番大変

 冷たい泥に入っての収穫。腰を曲げたままだし、さぞや大変なんでしょうね、と聞くと 「ちゃーんと腰の準備をしてるから、じゃまない(たいしたことない)」と。実はそのあとのほうが大変だという高田さん。 収穫したくわいは、泥を落とすために水洗い。すると、きれいな青い皮が顔を出します。金沢で栽培されているのは「青くわい」。青くつやがあるものほど良しとされているのです。そのあと、3Sから3L、規格外に選別。大きさの目安を穴に当てはめるボードもありますが、高田さんはあてはめなくてもだいたいわかるそうです。 乾燥しないよう、4kgの木の箱に藁を詰めてその上に洗ったくわいをきれいにならべていくのですが、きちんと詰めないと蓋が閉まらないとか。 「このあたりの作業は、お母ちゃんにかなわんわ」。夫婦二人三脚の作業です。 このように、栽培から収穫、出荷まで、ほとんどが手作業。 「1軒でたくさん作るのは難しいし、このあたりは小さい田んぼしかできんから、少しずつたくさんの人が作ればいいね」。  高田さんの後継者は、まだいないそうです。

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