“いいね金沢”加賀野菜

加賀野菜〜産地からのストーリー〜

金時草・西 佐一さん

西 佐一さん

『金時草は色が命。
朝、夜露のあるときに切ったのはピーンと光っとる。』

熊本から「水前寺菜」が持ち込まれ、「金時草」になったと言われていますが
水前寺菜に比べて葉も大きく色も鮮やかだというと、「そうやろ~?」と誇らしげ。
伝えられてきたものを作り、守り続けるだけではなく
金時草の匠は、大きくて鮮やかな赤紫色の葉に育てることに技や工夫をこらしています。


赤紫色を作るのは
寒暖差と収穫時間

 金沢の市街地から山のほうに向かって細く曲がりくねった道を上っていくと、小さな集落がいくつか点在しています。静かだけれど、畑や家屋に人の営みが感じられる風景。西さんの畑は、そんな集落からさらに山を登ったところにあります。
 ツクツクボウシの鳴き声だけが聞こえる静かな場所。金時草は、この場所で育つから鮮やかな色になるという西さん。
「金時草は、色が命。きれいな赤紫色になるには、寒暖の差が必要なんや。日中はあったかくて、夜になったらグッと冷えて朝まで涼しいこと。このへんは、昼は平地と変わらんぐらい暑くなるけど、夜10時ごろには15度~20度ぐらいまで気温が下がる。このぐらいの温度になると、色が付きやすいね」。
 葉の表は濃い緑、裏は鮮やかな赤紫色。これが金時草の命だという西さん。日照りが続くと焼けて色が悪くなるそうですが、畑の西側には大きな木があり、西日が差すころには日影ができます。よほど温度が高いとき以外は、遮光ネットをかけることもないそうです。標高が高い里山は、金時草の美しい色を生み出す大きな要因なのでしょう。
 美しい色の秘密は、もうひとつあります。それは、収穫時間。西さんは、朝5時半に畑に出て収穫を始めます。太陽が高く上る前、7時には作業終了。それから朝ご飯を食べて、今度は収穫した金時草を出荷するための作業に入ります。
 「朝、夜露があるときに切ったのは、つやもあるし、ピーンと光っとる。乾いてから切ったんじゃ、葉がしおれてしまうから。金時草は毎日、特に夜伸びる。夜の間に水分を吸ってつやが出るんやな」。このつやは、粘りと比例しているらしく、生のまま葉を噛むと糸を引くような食感と甘みが広がります。
「ほや。これが、金時草や」西さんが、胸を張りました。


生命力に頼らない
匠の技と誇り

 金時草は、種ではなく苗で育てます。収穫が終わる10月20日前後に株を起こしてハウスの中に入れ、冬を越します。里山に春が訪れる4月20日ごろ、ハウスの中で苗作り。「4月はまだ寒い。10℃以下やといかん。じっとして肥料もくわん」。 苗が育って外も温かくなったころ、畑に苗を植えるのです。まずは畑を起こし、有機質の肥料を入れ荒耕(ルビ:お)こしして土を作ります。苗は40㎝間隔に平植えして、育ったら横に泥を上げていきます。
 実は、葉を採ったあと茎を水に刺しておくとまた葉と根が出てくるぐらい、金時草は生命力が強い植物です。素人でも育てられる強さはあるけれど、育てやすいというのではない。という西さん。
「一枚一枚の葉が広くないとだめ。小さい葉がたくさんついているのはよくない。大きい葉にするには、太陽や風を与えてやらないかん。高く育てるのではなく、のびのびと広げて育てるんやな。そうすると、葉の数はとれんけど広い葉になる。収穫のときの剪定も大事。どこを残すのか、次に伸びるところを考えながら刈らんといかん。出荷袋の高さになったら収穫する人もいるけど。本当はもう二晩置けばいいっていうんや」。


金時草一筋
毎年チャレンジ

 父の代から金時草を育てていた西さん。定年退職後、本格的に取り組むようになったそうですが、子どもの頃から見よう見まねで畑仕事を手伝っていたそうです。20アールの畑は、金時草だけ。「“同じ葉物やし、ほうれんそうでも作らんか”っていわれるけど、ほかのはよう作らんもん。これだけに没頭しとる」。
 加賀野菜に認定されるずっと前から作り続けている金時草。
「腰は痛いし、本当はやめたいんやけど、加賀野菜を作れ作れ。て言われるもんでね」と口ではいうものの、肥料の種類とかやり方など、新しい技術のアドバイスがあれば、毎年チャレンジしているそう。
「勉強にもなるし、そうせんと進歩がないわいね」。
 匠の金時草作りは、まだまだ続きそうです。