“いいね金沢”加賀野菜

加賀野菜〜産地からのストーリー〜

赤ずいき・山岸 富松さん

山岸 富松さん

『うちのずいきは皮剥かんでいいよって
自信を持っていうとる。』

赤ずいきは、里芋の茎(葉柄)です。
実を太らせたり葉を大きくしたりするのではなく
茎を長く色鮮やかに育てることが、商品価値につながります。
色鮮やかでやわらかい赤ずいきは、農の匠の自信作です。


赤い色を作るのは
日影と畑の条件

 まるで人がこっちを向いて立っているよう。収穫時期、赤ずいきの畑には、背の高い茎が整然と並んでいます。濃い緑の葉の下にすらりと伸びる赤い茎。赤ずいきは、この茎の部分を食べる野菜です。
 「この赤い色具合が難しいんや。天気がいい日が続くと焼けて色が悪うなる。半日天気で半日蔭るのがいい。この畑は、いい具合に日影になるから」という山岸さん。
 金沢から富山の県境に向かう途中、夏は朝晩涼しく、冬は深い雪が積もる地域。山間にあるため、少し日が傾くと程よい日陰ができるのです。
 「蔭のほうが茎もよく伸びるし葉も大きくなる。もともと暑いのは苦手なんやろうな。黒土も色がきれいになるみたいや。赤土で作ると、こんな色にはならん」。山岸さんの畑は、黒々とした土。適度な湿り気を含んでいます。
 この畑で育つことは、赤ずいきの色のひとつの要件には違いありませんが、それだけではありません。
 赤ずいきの栽培は、3月の半ば、種芋をポットに植えて苗を作ることから始まります。赤土とコンポストを混ぜたものに植え、じゅうぶん温かくなった5月初旬まで育苗してから畑に植えるのです。
 「そのまま畑に芋を植えたら、こんな兵隊さんが並んだようにきれいにならん。ポットで苗を育ててから植えたら、太るときも同じように太るよ」。それから追肥をして、「浜合わせ」という盛り土を2回に分けてします。こうすることで、まっすぐ高く、赤ずいきが育つのです。
 収穫の直前に3回目の追肥をすると、果肉がやわらかくなるそう。
「うちのずいきは、皮剥かんでいいよって自信を持っていうとる」。


雪深い里山だから
種芋を室に保存

 春に苗を作るまで、収穫した種芋は、冬の間「室」に保存するそうです。室とは、土に横穴を掘って保存する倉庫のようなもの。自宅のそばに自分で穴を掘って作るそうです。冬の間、雪に埋もれた地中の温度は一定に保たれます。寒さに弱い種芋を、春まで保存するという、昔ながらの知恵が今も息づいているのです。
 また、山岸さんの家のまわりは畑とは違い赤土です。黒土だと、水分が多すぎて種芋が腐りやすいという欠点がありますが、赤土だと、その心配がほとんどないそうです。
 冬の間は、ときどき室の点検へ。「雪がちゃんとかぶっとるかどうか、外から見るだけや。開けたら温度が下がってしまうから」。
 雪深い里山ならではの気候や土壌を活用した保存方法。それでも、気候に左右されてしまうこともあります。
 「種芋が腐敗したら、次の年、どうもならん。だから、室の入れ方とかいろいろ研究しとるよ」。


収穫は日の出前
冷たい湧水で洗う

 赤ずいきの収穫は、朝4時から4時半ぐらいに始まります。朝日が出るまでに作業をし、7時ごろには収穫終了。日があたると、きれいな赤色が褪せてしまい、緑っぽくなるそうです。
 まず、葉を1枚1枚切り取ります。鋼の入ったスコップで株を上げたら、小分けして根を取ります。小分けにしたらすぐに軽トラックにつんで山を下り、湧水で洗います。
「湧水は夏でも冷たいわ。、この冷たい水が色を保つのにええんやろうな」。
 農薬での害虫防除はせず、「でっかい目玉の虫がかわいらしいさかい、手にのせて眺めとる」という山岸さん。
 日影や土壌、室が作れる雪深さ。そして山の恵みの冷たい湧水。里山の気候や風土と共に、代々人の手と知恵で受け継がれてきたのが、この地区の赤ずいきなのです。